
動物性の油や脂肪を摂らず、果物や野菜を沢山食べるヴィーガンの健康効果は、いろいろな研究で証明されています。しかし、ヴィーガンに限ったことではありませんが、食べ方やバランスを欠いた食事内容によっては、栄養不足に陥る可能性があります。
また、ヴィーガンの人は植物性食品からしか栄養素を得ることができないため、特定の食品やサプリメントに頼る人も多くいます。今回はヴィーガンの人が栄養不足に陥らないために、日々の食生活でどんな点に気をつければよいのか、不足しがちな栄養素とその対処法を見ていきましょう。
【目次】
ヴィーガンは栄養失調になる?不足しがちな栄養素

肉を摂らないヴィーガンにとって、真っ先に不足が懸念される栄養素といえば「タンパク質」ですが、ほかにも以下のようなものがあります。
・ビタミンB-12やビタミンD
・カルシウムやオメガ-3脂肪酸
・鉄や亜鉛、ミネラル など
これらの栄養素について、たとえば強化された食品を定期的に消費しない限り、日々の食事に適切なサプリメントを取り入れる必要があると一部の専門家は言います。しかし、サプリメントに頼り過ぎず、身近で手に入る自然の食材で栄養不足を補うことができたらいいですよね。
参照:国立医学図書館(NLM)/ビーガンダイエットの健康への影響https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19279075/
肉の代わりは?タンパク質

筋肉や臓器、肌、髪、爪、体内のホルモンや酵素、免疫物質などを作り、栄養素の運搬を担うのがタンパク質。20種類のアミノ酸で構成されているタンパク質の中で最も必要なのが「必須アミノ酸」です。必須アミノ酸は、卵、肉類、魚介類に多く含まれます。
※必須アミノ酸とは
トリプトファン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン・バリン・
ロイシン・イソロイシンの8種に、ヒスチジンを追加した9種類。タンパク質の栄養価を表す指標に「アミノ酸スコア」があります。たとえば、卵、肉類、魚介類、動物性の多くは100またはそれに近い数値となります。
対処法:アミノ酸スコアが高いものや必須アミノ酸を含む食物を組み合わせて摂る
畑の野菜ともいわれる「大豆」のアミノ酸スコアは100!しかし、ヴィーガンがよく食べているほかの豆類、ナッツ、シード、オートミールなどには、一部のアミノ酸が欠けています。ブロッコリーや枝豆など比較的アミノ酸スコアが高い食材を選んだり、キヌアやチアシードなどのスーパーフードとオートミールなどの穀類を組み合わせてバランスを取りましょう。
注意すること:キヌアなどのスーパーフードは、一度に大量に食べると消化不良を起こすリスクがあります。サラダやごはんに少量混ぜるなど、食べ過ぎないように注意しましょう。
参照:
アストリション 公式サイト/大豆のアミノ酸スコアは100なの?納豆・豆腐・豆乳は?【管理栄養士監修】 https://athtrition.com/170326/
ヴィーガンやベジタリアンは不健康?菜食主義で不足注意の必須栄養素7選
https://tokyovegan.net/nutritional-risks-of-being-vegan/
ヴィーガンが摂りにくいビタミンB12

ヴィーガンにとって、タンパク質の次に不足が指摘される栄養素ビタミンB12は、血管、皮膚、粘膜、さらに骨髄や赤血球の生成、脳(中枢神経)や末梢神経の機能維持、脂質やタンパク質の代謝、DNAの合成にも関わっています。また、ビタミンB12は、一般的に動物性の食品にしか含まれていない栄養素と言われています。
対処法:有機肥料で育てた野菜や細菌・酵母で作った発酵食品を食べる、ビタミンB12が強化された植物性の代替ミルクやシリアル、プロテインを摂る
ビタミンB12は、微量ですが海苔に含まれているという報告があります。動物性食品に含まれるビタミンB12の効果には到底およびませんが、ビタミンB12は微生物が生産しているビタミンという観点から、土のついたオーガニック野菜を選ぶというのもひとつの選択でしょう。
ニュートリショナル・イースト(乾燥酵母※人工的な栄養強化食品)は、約大さじ1杯で一日に必要なビタミンB12を摂取することができます。栄養強化シリアルやヴィーガン向けのビタミンB12プロテインなどもリストに入れておきましょう。
参照:厚生労働省eJIM/ビタミンB12
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/07.html
参照:TokyoVegan/ヴィーガンやベジタリアンは不健康?菜食主義で不足注意の必須栄養素7選
https://tokyovegan.net/nutritional-risks-of-being-vegan/
ビタミンDは体内で作れない?

主に魚から摂ることができるビタミンDは、ホルモンのような働きをし、カルシウムの代謝に影響を与えます。骨のカルシウム吸収を良くすることで(※1)、大人の骨粗鬆症や子供のくる病を予防することができます。筋力の維持、体脂肪の削減、免疫力の強化、うつ病リスクの低減に欠かせないだけでなく、癌の予防効果も期待されています。
対処法:日光浴をする、ビタミンDが強化された食品やキノコ類を摂る
日光浴の目安は、夏であれば一日15〜30分程度。ビタミンDは、乾燥きくらげや干し椎茸など、天日干し乾燥させたキノコ類に多く含まれています。
参照: National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition/ビタミンD解説 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail221.html
野菜にもカルシウムが含まれているの?

カルシウムは、骨や歯、神経系や筋収縮の調節(心拍数の健康など)を維持します。不足すると、クル病(小児)、認知症、骨粗鬆症、心疾患、高血圧や免疫異常を引き起こします。カルシウムといえば、乳製品があがると思いますが、ヴィーガンはほかのもので補う必要があります。その際に問題なのが、植物からのカルシウム摂取は吸収率が悪いということ。原因のひとつとしては、植物に含まれるシュウ酸です。
対処法:ビタミンD、タンパク質を一緒に取る(上記※1)、ビタミンK・イソフラボンや、マグネシウムと一緒に取る、シュウ酸は水溶性なので、茹でることで摂取量を減らす
豆腐(木綿、高野豆腐)は、乳製品に比べると吸収率は劣りますが、カルシウムやイソフラボンが多く含まれています。海藻類は豆腐より吸収率が高く、カルシウムの吸収率を上げるマグネシウムも多く含みます。ひじきは他の海藻に比べカルシウムの含有量が多く、マグネシウムと同様にカルシウムの吸収率を上げてくれるビタミンKも多く含みます。
シュウ酸は水に溶けやすい性質を持っているので、たとえば、ほうれん草を食べるときには生で食べずに茹でて食べましょう。
参照:
日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書/ビタミン
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586561.pdf
ヴィーガン子育て/
カルシウム不足の本当の原因を知っていますか?骨粗鬆症を防ぐ食事のポイント
https://vegan-kosodate.jp/nutrition/calcium#i-8
免疫が落ちる?ビタミンA不足

ビタミンAは目の健康や皮膚、粘膜の健康を維持するのに重要な栄養素です。免