ヴィーガンは本当に健康なの?ヴィーガン食を実践するメリットとは


肉や魚、卵、蜂蜜といったあらゆる動物性食品を避けた食生活を送るヴィーガン。栄養不足の問題を常に指摘される一方で、ヴィーガン食に切り替えることで動物福祉に貢献できる、世界中で起きている環境負荷を減らすことができる、あるいは個人の健康面での大きなメリットが期待できるなど、注目が高まっています。


「肉を食べなければ動物が苦しむことにつながらない」というヴィーガンの動物愛護、「畜産や魚介類の乱獲などによる環境破壊を止めよう」などというヴィーガンの考え方はとてもわかりやすく共感できるものです。しかし、健康の観点はどうでしょうか。


そもそもベジタリアン・ヴィーガンの定義やライフスタイルは、宗教性や環境、年齢などによりさまざまな違いがあり、データをとるにも計測自体が難しく、結果にもバラつきがあります。「研究結果」や「エビデンス」とは、あくまで可能性や兆候を示しているに過ぎません。


それでも近年、ベジタリアン・ヴィーガンの健康メリットやそれをサポートする科学的エビデンス、実践している人々の証言などは、興味深い内容ばかりです。今回は、そんなヴィーガン食の健康メリットにフォーカスしてみましょう。



目次

1. ヴィーガンとは

1−1. ヴィーガンの定義 ~欧州4か国や日本ヴィーガンエシカル協会の定義ほか~

1−2. 最新ヴィーガンニュース ~ヴィーガン発祥の地「イギリス編」~

1−3. ヴィーガンの有名人 ~ルイス・ハミルトンの場合~


2. ヴィーガン食のメリット

  2-1. ヴィーガンは痩せる?ヴィーガンのダイエット効果

  2-2. ガンや糖尿病、心臓病リスクは?ヴィーガンと現代病

  2-3. 肌がきれいになる?ヴィーガンと腸内環境


3. ヴィーガンの精神的健康


4.ヴィーガン食のメリットはまだまだある





ヴィーガンとは ~欧州4か国や日本エシカルヴィーガン協会の定義ほか~

あらためて、ヴィーガンがどのような定義づけをされているかを押さえましょう。フランスの調査会社 CREDOC(Centre de recherche pour l'étude et l'observation des conditions de vie)が欧州4か国(仏、独、英、西)におけるベジタリアンの動向に関する調査を実施した際の4大タイプの菜食主義の定義をご紹介します。


ベジタリアン(végétarien):肉や魚は食べないが、卵やチーズ、牛乳などの乳製

品は食べる


完全ベジタリアン(végétalien):肉や魚および全乳製品、卵を食べない。穀物、

野菜および果実のみを食べる


ヴィーガン:動物やヒト、地球のために、動物性の製品を一切消費しない。肉や卵、

蜂蜜など、動物由来のものを一切消費せず、食以外でも、皮や羊毛、シルクなどの

動物由来の製品は一切避けるライフスタイルを持つ


フレキシタリアン:完全にベジタリアンになるわけでなく、金銭的な理由以外の理

由で肉の消費を制限する


ヴィーガンは単なる食のスタイルではなく、動物福祉や環境配慮などの哲学がベースにあることがわかります。


「ヴィーガン (vegan) とは、すべての動物の命を尊重し、犠牲を強いることなく生きるライフスタイルのことです。1944年に英国でヴィーガン協会(The Vegan Society)が創設された際に、ドナルド・ワトソン氏が命名したとされています。近年は、優れたヴィーガン仕様の食品・衣服が出回るようになり、実践者は広がりを見せています。」(日本エシカルヴィーガン協会ウェブサイト http://www.ethicalvegan.jp/vegan-history/ より抜粋)


「ヴィーガンは健康的な食のスタイルである」ということがよりクローズアップされるひとつのきっかけになったのは、2007年に世界がん研究基金(WCRF)が、赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉など赤色の濃い肉)および加工肉に発がんリスクがあるとの研究結果を発表したこと。加工肉の摂取と心血管疾患やガンなどの死因の関係は、さまざまな研究機関により立証されています。



最新ヴィーガンニュース ~ヴィーガン発祥の地「イギリス編」~


東京新聞 tokyoweb(https://www.tokyo-np.co.jp/article/156466)の記事には、あのチャールズ皇太子も地球温暖化防止のために肉食を控えようと訴え、英国で近年、そんな意識が広がりを見せていると書かれています。


イギリスの最新ヴィーガンニュースによれば、ヴィーガン・ベジタリアンは2025年にイギリスの人口の4分の1を占めると予想され、また、フレキシタリアン(基本は植物性食品を中心、時には肉・魚も食べるという柔軟なベジタリアンスタイル。セミ・ベジタリアン、ゆるベジなどとも呼ばれる)はイギリスの全消費者の半分弱を占めるようになるとも予想されています。


イギリスの市場調査会社ミンテル(Mintel)による、イギリス人の成人1,000人以上を対象とした調査で、健康のために肉の消費量を減らすことに関心のある人が半数近くで、健康的な食事への関心が非常に高まっているため、時々ヴィーガンを実践している人々が、完全なヴィーガンになる可能性も考えられるといいます。


参照:Happy Quinoa ヴィーガン先進国!イギリスの最新情報をご紹介|発展するヴィーガンビジネスも/https://happy-quinoa.com/vegan-uknews



日本でも、2025年の食卓の姿において、「地球のためにメイン料理には代替肉・培養肉を選択」とはっきり明示しています。


参照:農林水産省 生活スタイルの変化に係る調査/

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/attach/pdf/ftitaku-4.pdf



ヴィーガンの有名人 ~ルイス・ハミルトンの場合~


数多くの有名人やスポーツ選手がヴィーガンにチャレンジ、実践して見事な結果を残しているニュースを目にします。たとえば、メルセデスF1ドライバーのルイス・ハミルトンは、食肉産業と、それが環境、動物福祉、人間の健康に及ぼす潜在的な影響についてのドキュメンタリーに触発され、ヴィーガンになったと話しています。家族がガンになった経験もヴィーガン食を実践する大きなきっかけになったようです。


参照:BBCスポーツ

ルイス・ハミルトン:ビーガンになりつつあるF1ドライバーと地球に対する彼の恐怖/https://www.bbc.com/sport/formula1/41296229





ヴィーガン食のメリット 

ヴィーガンは痩せる?ヴィーガンのダイエット効果


植物性食品は、動物性食品に比べて総じてカロリーが低く、菜食主義者は肉食中心の人よりもBMIが低い傾向にあることは容易にイメージできますね。糖質制限のケトンダイエットや原始人食とも言われるパレオダイエットなどと並んで、菜食主義も効果的な選択肢の一つです。同じ菜食主義でも、卵やチーズなど乳製品も食べない完全ベジタリアンやヴィーガンの方がより減量効果は高そうですし、また、消化に時間がかかる動物性たんぱく質を摂らないので、「カラダがすっきりする」「カラダが軽い」という声がよくあがります。


植物性食品は食物繊維も豊富に含まれているのもポイント。満腹感を得られやすく空腹感を感じにくいため、食べ過ぎ防止になります。コレステロールが低く、血圧が低い傾向がみられるヴィーガン食は、ヒトの平均余命を延ばすことができるかもしれない⁈といった大きな希望にも繋がっています。



癌や糖尿病、心臓病リスクは?ヴィーガンと現代病

・ヴィーガンは2型糖尿病リスクが低い

・ヴィーガンは糖尿病の予防食として有効

・糖尿病で気をつけるべきは、糖質ではなくて動物性の油

・糖尿病の直接の原因はインスリンの働きを悪くする食べ物(代表格が肉などの動物性の油)


このような研究結果は、ヴィーガンのメリットとしてよく挙げられています。

動物性食品がインスリンの機能を下げ、糖尿病のリスクを高めることが示される一方、逆に植物性食品はインスリンの機能を高める(正常に戻してくれる)とする主張です。


菜食主義者は癌のリスクが低く、卵も乳製品も一切食べないヴィーガンの方が更に低くなる、ヴィーガンであるか否かに関わらず「植物性の食べ物をたくさん食べる人は癌になりにくい」とする見解は、もはや主流です。


参照:Taylor and Francis Online/ ベジタリアン、ビーガン食、複数の健康転帰:観察研究のメタアナリシスによるシステマティックレビュー

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/10408398.2016.1138447


ヴィーガンと心臓病リスク

世界保健機関(WHO)の2015年の報告「WHOはお肉を発ガン性物質に指定します」/

https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr240_E.pdf



あきらかな肥満は、癌のリスクの重要な要因のひとつです。そのためBMIが低い傾向にあるヴィーガンの人は、癌のリスクも低いとされています。また、野菜に豊富に含まれ、ヴィーガン食でより大量に発生する植物化学物質は、抗酸化特性を持っており、細胞を破壊して癌の進行を止める働きがあるといいます。※ただし、低ビタミンDは癌のリスクの増加と関連しているという報告もあり、ヴィーガン食ではビタミンDの欠乏が懸念されることが議論になることもあります。



肥満と油(脂肪)の関係も見逃せません。ヴィーガンは植物性油を摂取するので、動物性油よりも有益であると考えられています。※ちなみに、植物油脂が体に悪いという主張は、マーガリン、ショートニング、ファストスプレッドなど植物油を原料とする加工品に言及していることがほとんどです。



果物や野菜、ナッツ、植物油、全粒穀物が多い地中海やアジアの食事は、心血管疾患の発症率の低下が報告されています。つまり、ヴィーガン食は同様の効果が得られると考えられます。



肌がきれいになる?ヴィーガンと腸内環境

「腸活ブーム」にもみられるように、ヴィーガンの腸には善玉菌が多く、腸内環境が良いことが注目されています。理由は、リンゴやブルーベリー、アーモンド、オートミールなど、善玉菌が増える植物性の食べ物がヴィーガン食の主だからです。


腸の健康がヒトの肌にも影響することは、広く一般的な知識です。ヴィーガン食で肌トラブルが改善したという声がよく聞かれます。たとえば、ニキビ。チーズやヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品も同様に、ニキビと関連しているのでは?というリサーチもよく目にします。



参照:onlinelibrary.wiley.com にきびに対する牛乳消費の影響:観察研究のメタアナリシス/https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jdv.15204



★豆知識★

白砂糖や小麦粉などが肌トラブルを引き起こすことは知られていますが、乳由来のホエイプロテインを飲む人にもニキビが多いとの報告があるようです。牛乳アイスを豆乳アイスに替えたり、ホエイプロテインから植物性プロテインに替えたりしてみるとトラブルが解消される可能性がありそうです。牛乳が消化できない乳糖不耐症は、日本人に多くいると発表されています。乳糖は牛乳のみならず、チーズやアイスクリーム、パンなど、乳成分を原材料に含む幅広い食品に含まれています。あらかじめ乳糖の消化を助ける菌が入っている食品や、製造過程で乳糖の一部が分解された特定の食品に関しては、消化不良の可能性が低いとの報告もあります。






ヴィーガンの精神的健康

食事は、内臓疾患リスクや脳の働きだけでなく、精神状態にも大きく関わっています。植物性食品の摂取、ヴィーガン食を実践するうちに、うつや不安が改善され、幸福感が得られるという方もいらっしゃいます。


対照的に、ヴィーガンのデメリットの一つ、ビタミンB-12不足は、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経系および認知的健康リスクがあるため、この問題がたびたびクローズアップされるわけです。



参照:News-Medical.Netビーガンダイエットの健康上の利点は何ですか?/

https://www.news-medical.net/health/What-are-the-Health-Benefits-of-a-Vegan-Diet.aspx



FORKS AND KNIVES 健康トピックスhttps://www.forksoverknives.com/health-topics/



ヴィーガンのメリットはまだまだある

ヴィーガン食は本当にヘルシーなのか、ヴィーガン食に切り替えることで得られる具体的なメリットをピックアップしてみました。上記のほかにも、ヴィーガンにとって嬉しい

メリットが日々、世界中で更新されています。


植物性食品には、動物性食品にひけをとらないビタミン類やポリフェノールなど、カラダの免疫機能の働きを高めてくれる栄養素がたくさん含まれています。コロナ以降増えている「免疫力を高めて病気をしにくいカラダを作りたい!」という人にも、ヴィーガン食を試す価値はあるかもしれませんね。


ヴィーガンを実践しているうちに自然と食に対する意識や関心が高まり、栄養や健康について考えるようになることも、大きなメリットといえるでしょう。動物性タンパク質をやめたら体臭が軽減されるなどの声は、実感しやすいリアルなメリットです。


ヴィーガン食により心筋梗塞や脳卒中、癌、腎臓病などによる死亡率が低下したという研究結果もあるようですが、とはいえ、持病がある人がヴィーガン食を実践する場合は、医師と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。


いずれにせよ、世界中から報告される、ヴィーガンの素晴らしいメリットから今後も目が離せませんね!



参照:大和総研/なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか

~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~

https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20210203_022067.pdf



ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)/日本貿易振興機構(ジェトロ)

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2021/3e2ee518305df3f0/rp202103vege.pdf