ヴィーガンの食事は体に良い効果があるという科学的エビデンスがある一方で、「ヴィーガンは不健康になる」「ヴィーガンなんて意味がない」といったアンチヴィーガンの声が後をたちません。ヴィーガンを実践している方やこれからヴィーガンライフにシフトしてみようと考えている方にとっては、心がざわつくトピックでしょう。
そこで今回は、なぜヴィーガンが不健康と言われるのか、その要因を探りながら、どうすれば正しく、楽しく、ヘルシーにヴィーガン生活を送ることができるのかを考えてみようと思います。
【目次】
1.ヴィーガンは不健康?
ヴィーガンになるきっかけは人それぞれですが、「今よりも健康的な食生活を送って元気になりたい、美しくありたい」というのがベースにあると思います。肉食でなく菜食中心の食生活は、生活習慣病のリスクを軽減することはまぎれもない事実であるのに、なぜそれを実践することが不健康と言われてしまうのでしょうか。考えられるケースに、次のようなことが挙げられます。
ケース1:高血圧や糖尿病などの持病を改善したくて、医者に相談せず自己流で食制限をはじめた
ケース2:体調を崩しているときに、無理してストイックな食制限を続けた
ケース3:ヴィーガン食を始めてから、外食ができないこと、自炊でも限られた料理しか食べられないことがストレスになっていった
ケース4:「健康になるためには、健康的なものを食べなければならない」と頑張り過ぎて、食べること自体が苦痛になった
特に、ケース3や4のような、メンタル的な部分が反動となって「やっぱりヴィーガンなんて無理だ!」「ヴィーガンは不健康になる!」と結論づけてしまった人もいるようです。
2.ヴィーガンが体に悪いと言われる理由
ステレオタイプな日本の食育
アンチヴィーガンは、世界中に存在します。共通する主張もあれば、国により独特の価値観や国民性がヴィーガン批判の内容に大きく影響しているようです。
たとえば、日本人は子供のころから、学校給食を始めとする食の教育方針として「バランスの良い食事をしましょう」といわれ続けてきました。肉や魚、米や野菜、卵や乳製品、果物などいろいろなものをバランスよく食べることが健康的と信じられています。その観点からすると、完全菜食であるヴィーガンは、そもそも動物性食品群を厳格に避ける食のスタイル=不健康と言う図式が成り立ってしまいます。
参照:食事バランスガイド
固定観念と偏見
また、日本人の先祖は、魚と野菜中心の食生活でした。食の急速な欧米化は近代になってからのことで、魚が日本人にとって最も重要なたんぱく源であり、肉よりも魚を食べるほうが健康的であるという考え方が根強くあります。
動物(魚・昆虫などあらゆる生き物を含む)を人間の生活のために搾取しないという動物愛護の精神に基づいたライフスタイルがヴィーガン。そのことを全く知らない人々や関心のない人々にとって、魚を食べるベジタリアン(ペスカタリアン)ならば、「肉が苦手な人なのね」と許容できる範囲なのかもしれません。ところが、魚はもちろん日常の食卓で当たり前に登場する卵や牛乳、醤油などの調味料まで避けるヴィーガンの人を目の当たりにすると、たちまちヴィーガンを変わり者扱いしてしまいます。
また、食のセレクトについて厳格な制限を持つヴィーガンは、おのずと外食をする機会がなくなります。海外では、ヴィーガンをはじめ、多様な食スタイルのニーズに応える専門店があたりまえに存在し、品揃えも豊富ですが、日本はまだそのような状況に至っていないからです。日本では「付き合いの悪い人」「協調性のない難しい人」と負のイメージを持たれてしまうこともしばしばです。
3.ヴィーガンは矛盾している?
ヴィーガンは矛盾していると考える人は多くいます。肉を食べないヴィーガンを単純に毛嫌いする人もいれば、専門家としての筋の通った意見や指摘もあります。
・ヴィーガンが食べる野菜も、安全を守るために害獣駆除を行っている場合がある
・環境改善を考えるなら、なぜプラスチックを使っているのか
・動物は食べないが、植物はいいのか、植物だって生き物ではないのか
・家畜のおならやゲップが良くないと言うが、車を利用して排気ガスを撒くのはいいのか
どちらが正しいかという論議でなく、互いの理解とより良い社会や個人の幸せに向けて、建設的な論議がなされることを願ってやみません。
流行りやファッションとしてのヴィーガン
有名人や流行に影響されてヴィーガンになる人もいます。最近では、逆にヴィーガンをやめた芸能人を取りあげて、表面的なムーブメントばかりをクローズアップしたニュースもありますね。そのようなことに警鐘を鳴らす人もいます。
自然保護活動家のイザベラ・トゥリーは「植物がどこからきて、どのように食品になったのか、何の疑問ももたずに植物由来の食生活に切り替えるだけでは、わたしたちの直面している問題──土壌汚染、水不足、公害、気候変動──の解決にはならない」とコメント。家畜はメリットとデメリットを両方はらんでいる、ヴィーガンは環境問題を真剣に考える「素晴らしいきっかけ」を提供したと話したうえで、動物性食品を食生活から完全に排除することが最善策ではない、と主張しています。
参照:ヴィーガンはなぜ、あなたが考えているほど地球に優しくないのか
無知
「ヴィーガン」や「ベジタリアン」という言葉を一度も聞いたことがない、という人は少ないと思いますが、ヴィーガンが、環境問題や社会問題の解決にどれだけ貢献できる可能性があるのかなど、まだまだ日本では真剣に論議されるほどメジャーな価値観になっていません。ヴィーガンがもっと認知され、身近に感じられる未来になってほしいと多くのヴィーガン達が願っています。
参照:2022年ヴィーガンが期待することの調査 by VEGANLIFE
4.ヴィーガンが健康にいい理由
ヴィーガンが体にもたらすメリット
動物由来の過剰な脂質や糖質の食事に偏ると、麻薬のような快楽を人間の脳に与え、あらゆる不調や病気を引き起こします。ヴィーガンはそのような習慣を避け、必要な栄養素を植物から摂取するので、成人病になるリスクも軽減され健康的であるといえます。
ヴィーガンのデメリットは栄養不足のおそれ
ヴィーガンが不健康だとされる最大の理由は、動物性食品を一切摂らないために、栄養不足に陥るリスクがあることです。たとえば、どんな栄養素が不足しやすいのでしょうか。
・ビタミン B12
レバーや卵、魚などの動物性食品に含まれている栄養で、極端に欠乏すると貧血や神経細胞に障害が起こります。植物性食品には含まれていないため、ヴィーガンにおけるビタミン B12不足は常に議論され、研究が続いています。今のところ、人は生まれたときに必要なビタミンB12を持ち合わせているとされ、それほど意識してビタミン B12を取る必要はないとされています。
改善策:どうしても気になる場合は、ビタミンB12が含まれたヴィーガン用のサプリメントや朝食用のシリアル、 ビタミン B12を強化したカイワレ大根といった野菜に着目してみるのもいいでしょう。
・タンパク質(Protein)
肉や魚、乳製品からタンパク質のもととなるアミノ酸を摂取するのですが、ヴィーガンはそうした食材を食べないので不足すると考えられます。しかし、大豆や枝豆などの豆類、カボチャの種などのシード類、アーモンドなどのナッツ類など、植物にもアミノ酸を多く含んでいる食材があります。
改善策:必須アミノ酸のバランスに気をつけて、上記のような食材を単一でなく組み合わせて摂取することで、植物だけでも良質なタンパク質の摂取は可能です。
・カルシウムとビタミンD
乳製品に多く含まれるカルシウムは、骨や筋肉を作り、そのカルシウムを吸収するためにはビタミンDが必要です。どちらもヴィーガンの食生活では不足しがちな栄養素です。
改善策:カルシウムはシード類やナッツ類、豆類、緑黄色野菜に多く含まれています。ビタミンDはキノコ類から摂取できます。
ほかにも、オメガ3脂肪酸、鉄分、亜鉛などの不足しがちな栄養素がありますが、要するに重要なことは、どんな栄養素においても、間違った摂り方を続けるのは危険という点。たとえば、日本人に不足しがちな食物繊維を手軽に取ることができる話題のオートミールは、栄養バランスも大変すぐれていますが、食べ過ぎたり、添加物や糖質を一緒に摂り続けてしまうと、何らかの支障が体に出るのではと懸念されています。
参考:ヴィーガンは健康なのか?科学的文献を調べてみた
ビーガン(厳格なベジタリアン)の人が欠乏する唯一の栄養素とは?⇒ヒント:たんぱく質ではありません!
5.ヴィーガンが気をつけるべきことは?
ヴィーガンの食事は科学的にも良い効果があると認められていますが、ヴィーガンへの偏見や、ヴィーガンに対する心のコンフリクト、間違った続け方をすると逆に体に悪影響を及ぼすリスクがあることをお伝えしました。ヴィーガンのメリットとデメリットを知り、自分の体に合う方法を見つけて、徐々に食生活を変えることが重要です。どんな食生活であっても、自分自身が楽しめることが最も大事、無理をしないことですよ。
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